『からすのパンやさん』や『だるまちゃん』シリーズなど数々の名作を生み出してきた、かこさとし氏ですが、多くの作品を発表している中で、生涯で唯一描いたクリスマス絵本があるのをご存知でしょうか?
サンタさんが主役の絵本は数あれど、かこさとし節が満載の新しい切り口で描かれたクリスマスの真相がとっても魅力的なんです。
幻の名作絵本が新表紙で復刊!
『サン・サン・サンタひみつきち』 七色のおはなしえほん 著者:かこさとし 出版社:偕成社/白泉社 発売年:1986年10月/2019年9月4日 価格:1,300円+税
かこさとし氏が『サン・サン・サンタひみつきち』を最初に発表したのが1986年。そして2019年9月、30年のときを経て、白泉社より装いも新たに復刊されました!
これまでに数多くの名作を世に送り出してきたのですが、クリスマス絵本のイメージはパッと思いつかない方も多いかと思います。それもそのはず、大人気シリーズの『だるまちゃん』にも『からすのぱんやさん』にもクリスマスをテーマとしたお話はなく、『七色おはなしシリーズ』の1冊として描かれた作品なのです。
【旧作】サン・サン・サンタひみつきち
七色のおはなしえほん/Amazonリンク
復刊を機に、表紙の絵柄が変わりました!おもちゃ工場の真っ白な作業服姿から、作業服を脱いだ赤い衣装のサンタに装いを替えています。前作の表紙のクリスマスっぽく無い感じが妙に笑えます。
ねる前に読みたい『サン・サン・サンタひみつきち』
あらすじ
最北の地、北極に運ばれてくる大量のゴミが入った白いコンテナ。雪にまみれて気づかれないけど、実は地下の工場では、そのゴミたちがバラバラにされて素材ごとに分けられていきます。その素材にふしぎな薬をかけて、あれやこれやの細工が終わると、ベルトコンベアから流れてきたのは、大量のおもちゃたち。
きちんと仕分けされて運ばれたかと思うと、そこで働く白い作業服の人たちが、広場に集合しました。今日は12月24日。工場長の号令に合わせて、各地域の担当者と確認作業をしています。それから、白い作業服を脱ぎ、制帽を被ると…ずらりと並んだサンタたちはトナカイ型のロケットに乗り込みます。
みんなが心待ちにしているプレゼントを持って…
ここに注目!
クリスマスのキラキラ感やワクワクしている子ども達、太ったサンタさんなどは一切無く、クリスマスの真実を切々と解説してくれていて、斬新!何となく、サンタさんって子ども全員に一晩でプレゼントを配るなんて無理だよなぁと、漠然と考えている子どもに妙な説得力で語りかけてくれます。
一番のみどころは、つぎつぎ運ばれてくるおもちゃたち!1980年代らしく、人形やおもちゃはレトロでかわいいものばかり。色合いや細かさが、さすがです。
親子でかざぐるまはどこだ?アヒルはどこだ??と探し絵を楽しみました。
まるであの『からすのパンやさん』の名シーンを彷彿とさせます!
絵本の舞台である「北極」やゴミがいっぱい詰まった「コンテナ」など、5才児には少し難しいかなという箇所も、子どもも分かる言葉で説明してあり、かこさとし絵本らしさを感じる1冊です。メルヘンな夢物語ではないサンタの本当の秘密を知れて、子ども心に響いている様子でした。
まだまだあるよ!七色のおはなしえほんシリーズ
七色のおはなしえほんシリーズは全14冊。こちらの作品たちは書店でなかなか見つからない場合は、地域の図書館などで探してみると、当時の絵本を保管している場合がありますので、気になる方はチェックしてみてください。
- 『こまったこぐま こまったこりす』偕成社 1986.7
- 『しらかばスズランおんがくかい』偕成社 1986.7
- 『こわやおとろしおにやかた : おもあかえほん』偕成社 1986.5
- 『まほうのもりのブチブル・ベンベ : おもしろえほん』偕成社 1986.5
- 『こぶた四ひきちんちろりん』偕成社 1986.3
- 『おねだりポンコとわがままコンタ』偕成社 1985.4
- 『かいぞく・がいこつ・かいぶつじま』偕成社 1985.4
- 『ねずみのしょうぼうたい』偕成社 1985.3
- 『ぞうのむらのそんちょうさん』偕成社 1985.2
- 『ちいさなちいさなものがたり』偕成社 1984.12
- 『たろうがらすじろうがらす』偕成社 1984.12
- 『コチコチやまのとこやさん : おもちゃえほん』偕成社 1984.8
- 『いっちくだっちくあひるのさんぽ : おもしろえほん』偕成社 1984.8
他にもあった!復刊版のおはなしえほん
今回ご紹介した『サン・サン・サンタひみつきち』以外にも、七色のおはなしえほんシリーズの中で『こまったこぐま こまったこりす』と『ぞうのむらのそんちょうさん』が読者のリクエストによって復刊されています。
(『ぞうのむらのそんちょうさん』は『しろいやさしいぞうのはなし』と改題・再編集さてれいます)
子どもの頃読んだお話を、わが子にプレゼントしたくても、絶版で購入するのが難しいということもありますが、素敵な絵本が復刊するのはうれしいですね!
『サン・サン・サンタひみつきち』のように、初版版と復刊版を比較してみるのも1つの楽しみ方です。
『こまったこぐま こまったこりす』 著者:かこさとし 出版社:偕成社/白泉社(復刊版) 発売年:1986年7月/2017年3月3日(復刊版) 価格:1,300円+税
1986年偕成社より刊行された同名の絵本を再編集の上、新たなあとがきを加え復刊したもの。
『ぞうのむらのそんちょうさん』/『しろいやさしいぞうのはなし』(復刊版) 著者:かこさとし 出版社:偕成社/復刊ドットコム(復刊版) 発売年:1985年2月/2016年3月(復刊版) 価格:1,300円+税
1985年偕成社刊『ぞうのむらのそんちょうさん』を改題、再編集したものです。
まとめ
- 『サン・サン・サンタひみつきち』は
かこさとし氏が唯一描いたクリスマス絵本 - 30年振りに新装版で復刊!
- サンタに抱く疑問をすっきり解決
- かこさとし氏の知られざる名作はいっぱい
- 寝る前の読み聞かせにオススメ!
子どもと一緒に読んだ後、お父さんにサンタの秘密を教えている様子を見て、なかなか内容を覚えていることに驚かされました!内容的にちょっと難しいかな?と思うところもありましたが、こちらが考えている以上に理解し、説明までできていたので、子ども扱いしすぎるのも、良くないなと反省しました。
この異色のクリスマス絵本はぜひ、サンタさんが来るのを楽しみにしている子と一緒にベッドの中で読んでみてほしいです。
では、おやすみなさい。